福島県の来迎石仏・板碑(94) |
★犬内(阿弥陀窪)来迎板碑 石川町字大内 金内氏宅
国鉄水郡線の大内トンネル近くの、阿弥陀窪と呼ばれる窪地に、2基の種子板碑とともにあったものを、夏は草が生い繁り犬も近づけないような場所では、保存にも不十分であるということから、昭和49年の暮に、新田保育所近くの金内氏宅の庭先に移建されたものであり、現在玄関の向い正面の植えこみの中にたてられている。
総高126㎝、下巾59、額部の上端で43、厚さ19㎝の凝灰岩製の、この地方としては比較的大型の来迎板碑である。
山形頭部は巾37・5㎝に対して高さは22㎝と高く、側面から見ると大きく照りをしめしている。二条線の下の額部は両側を面取りして、高さは18.5㎝あり、全体のバランスからみて額部の高いことが目立つ。身部の下には根部を造り出さず、直接地上にたてられている。
先の2基の来迎板碑とくらべて、脇侍の位置は中尊を中央にして早来迎形である点は同じであるが、適当な間隔をもち、阿弥陀如来は踏み割り蓮座の上に立ち、像高は33㎝をはかる。彫法は面部の周囲を1.5㎝くらいの巾で彫りこんで、板碑身部の表面と同じ高さに浮き出しにし、衲衣は斜めに浅くV字形に彫り窪めて表現する関東板碑と同じ手法がとられている。
この左側に面部を線刻にした勢至菩薩が胸元で合掌し、裳は阿弥陀如来と同じような彫法をとり、横の壁だけで衣文を表現し、その両側に天衣が風になびくように、末広がりに垂れ下り、やはり踏み割り蓮座の上に立つ。右側には、やや身体を前に傾けた観音菩薩が、蓮台を持ち踏み割り蓮座の上に立つのは、勢至菩薩と同じである。いずれも、頭光や飛雲などは何も彫られていない。