福島県の来迎石仏・板碑(38) |
★前田川広町来迎石仏 須賀川市前田川字草池下
街の中心地から8㎞程南の原野にあり、JR「鏡石」駅の東方2.5㎞位に位置する。鎌倉街道が通っていた横の台地の突端部を上った直ぐの所に覆屋が作られ、その中央に保存状態のすぐれた双式の来迎石仏が直接地上にたてられていて、その右側に倒れている残欠がここに取り上げる来迎石仏である。
黄白色の表面が剥離しやすい凝灰岩製の来迎石仏は、現高57cm、上巾41・5cm、下巾45cm、厚さ17.5cmの大きさで、下端にホゾを造り出してある。
下方部分の31cmは平面のままで、その上方に石の左右ほぼ中央から右側にかけて飛雲に乗って跣づいた姿勢で蓮台を前方に差し出す観音菩薩が薄肉彫りされ、その後方には勢至菩薩の乗る飛雲と思われる凹凸が見られるがかなり風化して鮮明さを欠く。蓮台の右斜め上方には敷物の上に正面向きに坐って合掌する念仏行者の姿が小さく彫られており、念仏行者像を伴った早来迎形の三尊石仏の残欠であることが判る。
その像容は以前に取り上げた郡山市堀之内の来迎石仏(右側の2基)に似たものがあると思う。
石の下部平面と像の彫られる平面は1.5cmの段差があるので、石の上方には輪郭がとられていたように考えられるが、石の右辺は剥離し、左辺は欠失しているため確認することはできなかった。
下端にホゾがあるところから台石の上にたてられていたことが判るが、須賀川市仁井田・願成寺来迎石仏や石川郡玉川村仁戸内・阿弥陀堂の弥陀三尊来迎板碑位しかそのような例はなく、比較的小型のものに限られているのではないかと考えられる。