埼玉県の図像板碑(170) 日高市 |
田波目は市北部に位置し坂戸市に接する。
地方道日高川島線を北に入った三叉路の一隅に、半間四方ほどの小祠が建てられ、その中に埋け込まれて板碑が祀られている。周辺は畑地が広がり目印になるものがない。
地上高74.5センチ(総高98.5センチ)、上幅35.7、下幅34.3、厚さ3.5センチで、頭部山形に作るが大きく欠失していて一部が残るだけである。また石面の左側も全体に欠損が目立つ。二条の刻みの下に高さ4センチの額部を持ち、更にその下に溝を刻む。身部に幅29センチ、高さ57センチの枠を陰刻するが、左辺は一部分が確認されるだけである。
枠一杯に大きく天蓋を彫り、両端に二段の瓔珞が垂れ下がる。瓔珞の間に直径10.5センチの頭光をおう像高20センチの地蔵菩薩が、左手に宝珠右手に錫杖を持って蓮座の上に立つ。衣紋の端は魚の鰭のように三角に尖って左右に張り出す。刻線はごく粗く細微は刻まれないように見られる。
蓮座の下に敷き布の上に華瓶・香炉・燭台の三具足を載せた前机を陰刻し、蓮座との間左右に「文明二二年(1472)壬辰/十一月廿二二日」の年紀が刻まれる。他の刻字は認められない。
本塔は埼玉県『板碑』には収録されず、日高町史調査報告第六集『日高町の板碑』(平成2年3月20日)の99ページに「67 田波目榎堂小祠(田中義一家)」として収録される。所在確認を教育委員会にしたところ報告書発行後資料の把握はしていないという断りと、該当ページのコピーが送られてきた。埼玉県の板碑研究者Y氏の案内を頂いて実査する事が出来た。