福島県の来迎石仏・板碑(2)・陽泉寺 |
安山岩質の凝灰岩製で、総高168.5cm、最大幅131cm、最大厚さ37cmを測る大きなもので、三角状の自然石表面を角を丸く取った長方形に1.2cm彫り窪め、その中に早来迎形の弥陀三尊像を薄肉彫りする。三尊共に飛雲に乗り、向かって左から右下へ下降し、念仏行者のもとへ来迎する様を表現する。彫刻の巧みさ、動感など福島県下150基程の弥陀三尊石仏・図像板碑の白眉と言いうる作品である。
輪郭の両側周縁に次のような銘文を刻む。
「右志者為悲母也平氏女敬白
(来 迎 三 尊 像)
正嘉二年大歳戊午九月十八日」
正嘉二年の銘は福島県の来迎石仏・板碑で最も古い年号で、関東における武蔵板碑で早来迎形を刻むものが埼玉県北埼玉郡騎西町・大英寺の正嘉元年四月のもので、わずか一年四ヶ月遅れるが、大英寺塔が線刻に対し、薄肉彫りの量感に溢れるものであり遙かに優れた工作と言わなければならない。なお、上の拓影は石井真之助氏の『板碑遍歴六十年』より引用したものである。