福島県の来迎石仏・板碑(45) |
★★ 前田川広町双式来迎石仏 須賀川市大字前田川字草池下
須賀川市前田川と石川郡玉川村竜崎にまたがる乙字ヶ滝の傍を通って石川へ抜ける石川街道の稲荷田から西へ約1㎞、広町地区は古代・中世の大集落があったといわれる所で、阿武隈川西岸の丘陵地帯を通っていた街道がこの中世宿駅に入っており、慶安検地の時に約40戸の居屋敷を数えたという。
双式来迎石仏は、東西にのびる舌状台地の突端部に覆屋を設けて、その中に直接地上にたてられている。地上高133cm、上巾69cm、下巾126cm、厚さ14cmの三角形板状のかたい石質の安山岩を用いる。
表面を平らにしてほぼ同寸の凸字形の輪郭を左右二区に彫り窪め、それぞれの空間中央に正面向きの弥陀立像が飛雲の上にのり、その左手の辺りから下に蓬台を両手で捧持する観音立像を、反対側に胸の所で手を合せ合掌しやや上半身を前に曲げる勢至立像という、通形の三尊像を二組薄肉彫りする。その像容や像高などは左右ともほぽ同じで、二組の同形の三尊像を彫るところから、夫婦の供養を目的としたものと見られる。発見当時、前に傾いていたために風化も少く、彫刻も細かく丁寧に作られ、中通りの来迎石仏の中でも優れたものの一基である。
なお、右に倒れているのは以前に取り上げた弥陀三尊来迎石仏(上部欠失)である。