東京都(二十三区)の図像板碑(18) |
東京都荒川区 町屋2・稲荷神社 弥陀三尊庚申塔
都下鉄千代田線「町屋」駅北西約100メートルの所に鎮座する稲荷神社の社殿の右奥に立つ。当社は通称原稲荷、町屋稲荷ともいわれ、五穀豊穰の神である倉稲魂命(うかのみたまのみこと)を祀る。その創建年代は未詳だが天正十八(1590)年徳川家康入部にともなって三河国の百姓が町屋に移住してきたときに遡るという伝承があるという。
正面に「奉納」と刻んだ台石の上にたち、高さ115センチ、上幅43.3、下幅44、厚さは最大で29センチを測る安山岩製のもの。頭部を山形に整形し、中央が半円になった額を持ち(この部分は1センチ身部より凸出する)、身部には幅34センチの輪郭を巻く。
塔身部を1.4センチ彫り沈めて、その中に大きく阿弥陀三尊像を線刻する珍しい形式の庚申塔で次のような刻銘が読み取れる。
正保四年丁/亥二月吉日 留左衛門
内 方
ア 庚 敬 半左衛門
ウーン 奉造立 内 方
バン 申 白 卯 兵 衛
内 方
待供養為現当安樂也 兵 介
内 方
江戸初期の正保四年(1647)の造立で、先の足立区・正覚寺塔と同じように弥陀来迎図が近世の石塔に継承された例である。
基礎部には左右に合唱する二猿を線刻し、間に四組の夫婦名を刻む。
縣敏夫『図説庚申塔』(116ページ)に詳しい解説がある。種子は金剛界大日・胎蔵界大日・蘇悉地経(両部不二)」の三尊とするのが妥当とする。