埼玉県の図像板碑(145) 北足立郡伊奈町 |
JR高崎線「上尾」駅から伊奈町役場行き東武バスで終点下車、東へ約200メートル(途中右手に伊奈病院あり)道ばたに「小室観音/清光寺」の案内板があり、左折すると正面に小室観音堂が南面して建っている。清光寺はその左に庫裏と成田不動堂がある。交通はほかに、大宮からの埼玉新都市交通ニューシャトル「伊奈中央」駅を下車し、東へ徒歩で約15分で寺に到る。天台宗の寺院で福王山金剛院清光寺と名乗り足立坂東五番札所で小室観音と呼ばれる。又、境内に小貝戸貝塚(下の写真左側)がある。
弥陀三尊図像板碑は下部を欠失し、残る部分についても二つに折れている。現高91.5センチ、上幅41.3、下幅42、厚さはほぼ平らな背面をもち5.7センチを測る。頭部の山形は欠損しているが二条の刻みを持ち、身部には幅36.7センチ(長さは不明)の輪郭線を陰刻し、その11.2センチ下から頭光をおった正面向きの来迎相の阿弥陀如来が蓮座の上に立っている。衲衣は襞にあたる部分を陽刻しその間は平らに凹刻する手法をとる。面部・手足は石の表面のままとし、フチを線刻する。衲衣の部分が斜めに折損する。三重の円光背から三条と一条の光明が交互に線刻され、一番内側の光背は面部との間を扇状に凹刻する。蓮座は左半分が残るだけで斜めに大きく欠損するがその蓮座の下に、勢至菩薩の頭光の中に短い線刻で宝冠と髪を表す顔の半分が残っている。そのことからこの図像板碑が弥陀三尊図像板碑であったことがわかる。
輪郭線の上端左側に直径5センチの太陽、上端右側には直径5.2センチの月が表されているところから、この板碑の造立年代が室町時代と知られる。
この他に、総高44.2センチ、上幅15.9、下幅16.2、厚さ2センチの釈迦種子板碑(完形)や勢至菩薩種子を残す三尊種子板碑だったと思われる板碑の断片等が残される。