群馬県の石造美術(8) 雷電山の笠塔婆 |
県都前橋市から約6.5キロ北東に当たる赤城山南東麓の村で、山上の石造三重塔(国重文)や関の磨崖仏(阿弥陀三尊=鎌倉時代、県重文)、弘安九年銘を最古に17基の板碑が有るなど、石造文化財の多いことで知られる。
村の南東部・榊の雷電山と呼ばれる斜面地(県史では長野家墓地とする)に東面して直接地上に立っている(村指定文化財)。地上高114.5センチ、上幅47.5、下幅51、厚さ30センチの角柱状の凝灰岩製の塔婆で、現在上の笠は失われて無い。石の上部に高さ5.5センチ幅26センチの枘を造り出す。上辺から18センチ隔てて39.5センチの高さで二重光背を8センチの深さに彫り窪め、この中に蓬座を含めて32センチの阿弥陀如来像を彫り出す。中尊の下には左右に同じような光背を彫り32センチ(右側)、37.2センチ(左側)の観音・勢至菩薩の二脇侍像を陽刻する。中尊は坐像に、脇侍像は立像に造られる。
この形式が埼玉県熊谷市(旧江南町)の大沼公園所在の、嘉禄三年銘の弥陀三尊図像板碑に類似するところから、この笠塔婆が先行するという見解もある。
(新里村は2005年6月、桐生市・黒保根村と町村合併して桐生市となる)